1970年代初頭の日本では、安保闘争・学生運動の熱が少しずつ冷めてゆく中、一部の若者たちの間で得も言われぬ敗北感と挫折感が漂い始めていたという。
そんな時代に、この「神田川」は生まれた。
南こうせつ、伊勢正三、山田パンダからなるフォークグループかぐや姫が1973年に発表したもので、45年経った今でも“昭和の代表曲”として愛され続けている名曲の一つである。
当初はアルバムの一曲として収録されていた歌だったがラジオで大反響を呼び、急遽、シングルカットされて160万枚を売り上げる大ヒットを記録した。
楽曲のクレジットには作曲:南こうせつ、作詞:喜多條忠(きたじょうまこと)と記されている。
歌詞を書いた喜多條と言えば、1960年代の終り頃に浅川マキと出会ったことをきっかけに、劇団・天井桟敷を旗揚げしたばかりの寺山修司などとも親交のあった作詞家で、第一期がくや姫のシングルのB面曲「マキシーのために」で作詞を担当した人物でもある。
1970年のデビュー以来、ヒット曲にめぐまれなかった南は、かぐや姫の3rdアルバムを製作するにあたって文化放送で放送作家をしていた喜多條に作詞の依頼をした。
あるインタビューで、喜多條は当時のことをこう語っている。
「締め切りは今日なんですけどねって平気な顔して言うんです。」
急な依頼に何も浮かばなかったという。
その日の帰宅途中に彼は神田川沿いを歩きながら…ふと数年前のことを思い出す。
彼女とアパートで同棲していた学生時代。
大学の近くにあった三畳一間の小さなアパート。
窓の下には神田川が流れていた。
60年代、キャンパスには学園紛争の熱が渦巻いていた。
「あの暮らしは一体何だったのか…」
喜多條は、依頼された歌詞にその思い出を書こうと決意した。
大学時代には頻繁にデモ運動にも参加していた。
ある日、疲れ果ててから帰るとカレーライスを作っている彼女の後ろ姿を見る。
コトコトと包丁で刻む、ささやかな幸せの音。
貧しくとも、かけがえのない時間。
このまま彼女と結婚して、社会人として安穏に人生を生きてゆく。
「俺はそれでいいのか?彼女の優しさ、そして平凡な暮らしの中に埋もれていく自分…そういうのが怖かった。」
書き終えた歌詞の最後に「ただ貴方のやさしさが怖かった」と書き加えた。
彼女の目線(言葉)で綴られていた歌詞は、その一行だけ喜多條の思いとすり替わる。
当時学生下宿が多かった早稲田界隈が舞台となったこの歌。
喜多條はある寄稿文に、歌詞に登場する下宿や風呂屋の場所を具体的に綴っている。
「下宿は明治通りの戸塚警察署の向かい側を神田川沿いに入って、戸田平橋と源水橋の間、高田馬場2丁目11番地あたりです。銭湯は西早稲田3丁目、現在の甘泉園近くの路地から少し入った場所にあった“安兵衛湯”。現在はもう廃業してるらしいです。」
歌詞を書き上げた喜多條は、すぐに南に電話をして音読しながら伝えたいう。
南もまた、その日のことを鮮明に憶えていた。
「小さな石けんカタカタ鳴った…と書き止めながら、最初はなんて変な歌詞なんだろうと思いました(笑)」
受話器から聞こえてくる言葉(歌詞)をメモしながら…南の頭にはすでにメロディーが浮かんでいたという。
<引用元・参考文献『歌がつむぐ日本の地図』帝国書院>
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