1978年9月5日、八神純子の5thシングル「みずいろの雨」がリリースされた。
当時、約60万枚を売り上げてオリコンチャート2位となったその歌は、彼女のキャリアの中で最高セールスを記録した代表曲となった。
クレジットには作曲・八神純子、作詞・三浦徳子、編曲・大村雅朗と記してある。
曲の発表からさかのぼること数ヶ月…。
その年の初夏、彼女は札幌でコンサートをするために千歳空港に降り立った。
当時、彼女は気分的に落ち込んでいた。
空港から札幌市内に向かう車の中で、ふと口をつくメロディーがぼんやりと浮かんだという。
彼女は当時のことをこんな風に回想している。
「私の場合いつもキーポイントになるメロディーが浮かぶのは、落ち込んでいる気分が少し上向きにかげんになってくる時なんです。確かあの時もそうでした。」
当時“落ち込んでいた”という理由。
彼女に一体何があったのだろう?
彼女は八神製作所(医療機器の専門商社)の4代目会長の長女として生まれ、名古屋にある3千坪の大邸宅で育った。
3歳からピアノを、小学校1年生から日本舞踊を習うほどの英才教育を受ける。
幼い頃から歌が大好きで、自宅でも壁に向かってザ・ピーナッツやシャーリー・バッシーの歌を唄い続けていたという。
高校生になるとボーカルスクールにも通い、自作の歌を創作し始める。
1974年、初めて作詞作曲した「雨の日のひとりごと」で第8回ポプコンに出場する。
彼女は16歳にして見事優秀曲賞を受賞し、同年の12月にはキャニオン・レコードAARD-VARKよりプレデビューを果たす。
その後も彼女は音楽業界から大きな注目と期待を集めながら、学生時代を過ごす。
そして20歳の時に満を持してメジャーのレコード会社(ディスコメイトレコード)と契約。
デビューシングルの「思い出は美しすぎて」(1978年)も売上12万枚のスマッシュヒットとなり、歌手活動も順風満帆と思われていた…。
ところが、同年にリリースしたメジャー2作目で彼女はつまずくこととなる。
当時のレコード会社の関連のコンテストに出場し、グランプリを取ったアーティストが、メジャーデビューをせずに引退。
いわゆる“大人の事情”で、彼女がそのグランプリ曲「さよならの言葉」をカバーしてリリースをするのだが…不発に終わる。
初めての挫折。
これまで応援してくれていた両親は、一転して「もう歌手なんか辞めろ」と言いだし、当時計画していた上京しての活動も反対され、彼女は歌手生命の危機に立たされることとなる。
「これで最後にするから、あと一曲だけ!」
彼女は両親を説得し、新しい曲を作るために渋谷のホテルに宿泊し自分を追い込んだ。
「今度こそ自分で作った曲を歌いたい!」
ヒットしなければ音楽の道をあきらめなければならないというプレッシャーが彼女を追いつめていた。
ホテルの一室に籠りながら…焦燥と意地が入り交じる中、なかなか作業がはかどらない。
彼女はある日、気分転換のために散歩にでかけた。
渋谷からゆっくりと歩きながら原宿の歩道橋の階段をのぼっている時に…あの札幌行きの車の中でぼんやりと浮かんできたメロディーが頭の中で鮮やかに響きはじめた。
そして、歩道橋を渡りきった時にはもう曲が完成していたという。
彼女はすぐにホテルに引き返し、一気に曲をまとめあげて、すぐに担当ディレクターの日朝幸雄のもとを訪ねた。
「今度のシングルはこの曲でいきたいんですけど!」
日朝はその時のことをこんな風に語る。
「一度聴いただけで“これはいける”と直感しました。この曲に詞を書ける作詞家はいないか…僕の脳裏に当時デビューしたばかりの女性作詞家・三浦徳子の名前が浮かびました。」
こうして彼女の進退を賭けた「みずいろの雨」は完成し、リリースされることとなった。
すぐにラジオ番組を中心にリクエストが殺到し、人気テレビ番組『ザ・ベストテン』の
“今週のスポットライト”に出演したことで、彼女は一夜にしてスター歌手となった。
<引用元・参考文献『フォーク名曲事典300曲』/富澤一誠(ヤマハミュージックメディア)>
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