川の流れのように〜美空ひばりが生涯最後に“想い”を込めた名曲にまつわる運命的なドラマ
1989年1月8日、元号が「昭和」から「平成」へ移り変わったその日、美空ひばりは一篇の短歌を詠んだ。 「平成の我 新海に流れつき 命の歌よ 穏やかに…」 そのわずか3日後(1月11日)に、「川の流れのように」はシングルカットされた。...
View Article裸の街〜泉谷しげるの最高傑作とも言われるアルバムの核となった名曲
50年近くにもおよぶ音楽キャリアを誇る泉谷しげるがこれまでリリースしてきたアルバムの中で最高傑作と言う人も多い『’80のバラッド』(1978年10月25日発売)。 泉谷の代表曲「春夏秋冬」(1972年)のプロデュースを手掛けたことでも知られる加藤和彦とのタッグによる作品で、アレンジを含めレコーディングテクニックの細部に渡って、洗練されたセンスが光る作品である。...
View Articleノーパンの魔女
「リンダがジョニーとリハーサルをしていたの。 見ていたジューンは彼女がノーパンだと気づき、楽屋にもどってきてこう言ったわ。 “誰かブルマーを買ってきて!リンダが夫に見せびらかしてる!” 下着をはけと言われたリンダは“はかないほうが歌えるわ!”と腹を立てたわ。 だけど“夫の前ではダメ!”とジューンにキツく言われて、ようやくはいたの」...
View Articleボ・ディドリーを偲んで〜名立たるロックスター達がこぞって継承してきたビートの発明者
「俺はチャック・ベリーみたいに器用なことは出来ねえ!ガンガン鳴らすだけだ!」 2008年6月2日、ボ・ディドリー(享年79)が米国フロリダ州アーチャーの自宅で息を引き取った。 死因は心不全と発表された。 晩年も精力的にツアーをこなしていたが…2007年5月13日、公演先のアイオワ州カウンシルブラフスで脳卒中をおこして入院を余儀なくされる。...
View Article最後のニュース〜筑紫哲也と井上陽水の深い親交によって生まれた名曲
♪「最後のニュース」/井上陽水 昭和から平成へ…ベルリンの壁が崩壊し、天安門事件やリクルート事件に関するニュースが連日報道されていた1989年の夏にこの「最後のニュース」は作られた。 作詞作曲を手掛けた井上陽水は当時41歳で、デビューから満20年という節目の年を迎えていた。...
View ArticleMercy Mercy Me〜マーヴィン・ゲイが紡いだ環境汚染への警告ソング
「もうショービジネスは辞めて、本当の魔術師が持っている力と能力を追い求めていきたいんだ。その力っていうのは、ここにもあるし、岩の中にも、空気の中にも、動物達の中にもある。こうした力や要素を取り入れて、身に起こる不思議な現象を引き起こすことができる“知識の人(men of knowledge)”がいるんだ。」 あぁ、どうかどうかお許しください あぁ、すべては以前とは変わり果ててしまった おぉ、ノー...
View Articleロニー・レーンを偲んで〜琴線に触れる“ロッキンフォーク”を紡いだ男の功績と足跡〜
1997年6月4日、アメリカ合衆国コロラド州ラスアニマス郡にあるトリニダードという小さな街で一人の才能豊かなミュージシャンがこの世を去った。 彼の名はロニー・レーン。 イギリス出身の彼は、スモール・フェイセズ、そしてフェイセスのメンバーとして活躍したことで知られた男だ。 バンド時代はベーシストとしてのイメージが強いのだが、作曲家、クリエイターとしてのセンスは秀逸だった。...
View Articleマイルス・デイヴィス27歳〜麻薬中毒からの脱出、その決意と“薬抜き”の苦しみと喜び
「麻薬との戦いが終わった日、俺は12日間籠った農場から歩いて外に出て、オヤジのところまで行ったんだ。そこで彼と目が合った時、お互い笑顔と涙で顔を歪ませながら抱き合って泣いたよ。」 マイルス・デイヴィスの音楽キャリアは、13歳の誕生日に父親からプレゼントしてもらったトランペットを手にした時から始まった。...
View Article兵隊が戦争に行くとき〜フランスで生まれた反戦歌
銃に花を飾り 太鼓を叩きながら彼は行く 二十歳で恋する胸はずませて 准士官が彼の歩調と脇腹の装具を監視する 兵隊が戦争へ行くとき 雑のうカバンには一番大切な物が入っている 兵隊が戦争から帰ってくるとき 雑のうカバンには汚れた下着が入っている この「Quand un...
View Articleオーネット・コールマンを偲んで〜新しいジャズ=フリージャズを創り出した革命家の偉業〜
2015年の6月11日の朝、従来のジャズの演奏スタイルを覆した“ジャズの革命家”がニューヨークのマンハッタンで死去した。 家族の代理人によれば、死因は心不全。85歳だった。...
View Articleベニー・グッドマンを偲んで〜アメリカ音楽史上初めて黒人と白人を同じバンドで演奏させたスウィングジャズの立役者〜
作家の村上春樹は著書の中でベニー・グッドマンについてこんな風に綴っている。 肌の色なんかよりは、その時代その時代の優れたミュージシャンをリクルートし、新しい息吹を迎え入れ、自分の楽団を常に第一線の刺激的な存在にしておくことがグッドマンにとって最優先事項だった。 楽器から出てくる音さえ素晴らしいものであれば、そしてそれがご機嫌にスイングさえすれば、彼は半魚人だって雇ったかもしれない。...
View Articleフジ子・ヘミング27歳〜国籍を失った青春時代、そして難民としてドイツ留学の夢を叶える
フジ子・ヘミング。 「聴いた人が涙を流すピアニスト」 「聴力の80パーセントを失った音楽家」 「60歳を過ぎるまで全く無名だった天才アーティスト」 彼女がメディアで紹介される時に使われてきたフレーズだ。...
View ArticleGreen Green〜アメリカの不安定な社会情勢や既成概念に対する反発から生まれた歌
グリーングリーン 噂に聞くその地は ずっと遠くの丘の向こうにあるんだ グリーングリーン 僕は旅立つよ 緑輝く希望の地へ… 生まれたその日にママに言ったさ 僕がいなくなっても泣かないでって 僕を落ち着かせる事が出来る女性なんていないんだ 僕はただ彷徨い続けるだけ…歌いながら この「Green...
View ArticleRain Dogs〜トム・ウェイツが80年代に発表した名盤にまつわるいくつかの逸話
壊れた置き時計の中 ワインをまき散らす 雨の犬たちと一緒になって… タクシー、俺たちゃ歩いた方がよさそうだ 雨の犬たちと一緒に戸口めざし一目散 だって俺も雨の犬だからね… ラムを浴びるように呑んで 踊りの精を追い払ってしまえ 雨の犬たちとつるんでね… 破滅の行列にくわわるのさ 俺の傘なんて雨の犬たちにくれてやる だって俺も雨の犬だからさ… このタイトルナンバーを含むアルバム『Rain...
View ArticleHurdy Gurdy Man〜“英国のボブ・ディラン”と称された男ドノヴァンがジミヘンのために書き下ろしたという歌
いつまでも漂う眠りの中 宇宙の星のように放り出され ひと目みようと目を見開くと 静かに見つめ 海辺にいる自分に気づく その時ハーディー・ガーディー・マンが 愛の唄を歌いながらやってきた ハーディー・ガーディー・マンが 愛の唄を歌いながらやってきたんだ...
View ArticleL.A. Woman〜ジム・モリソンが死の直前に放った最高傑作、ブルース用語“mojo”の正体とは!?
この街にやって来たのは ほんの一時間前 俺はあたりを見回した 風向きを見るために あの可愛い女がハリウッドのバンガローのどこにいるのか 君は幸福な女なのか?この光の都で… あるいはありふれた堕天使なのか?夜の都で… L.A.の女 L.A.の女 日曜日の午後に L.A.の女 L.A.の女 日曜日の午後に L.A.の女 L.A.の女 日曜日の午後に ロスの郊外を車で走り抜けて...
View Articleティム・バックリィを偲んで〜“フォーク界のカルト的ヒーロー”と呼ばれた男の足跡と功績
1975年6月29日、米国カリフォルニア州サンタモニカで“フォーク界のカルト的ヒーロー”と呼ばれた男が28歳という若さでこの世を去った。 死因はアルコール及びヘロインの過剰摂取だったと言われている。 彼の名はティム・バックリィ。 フォーク、ロック、ジャズ、そしてサイケデリックまでを取り入れた幅広いサウンドで、後のミュージックシーンにも大きな影響を与えた存在である。...
View Article加山雄三27歳〜トップスターとして多忙を極める若大将に名匠・黒澤明が放った一言
1960年5月1日、加山雄三は東宝と専属契約を結ぶ。 二ヶ月前に慶應義塾大学法学部を卒業したばかりの彼は、その夏、三船敏郎主演の映画『男対男』でデビューを果たす。 23歳で芸能界入りした加山の当時の夢は、自分の船を持つことだったという。 翌年、シングル「夜の太陽/大学の若大将」で歌手キャリアもスタートさせる。...
View Articleパティ・スミスとチェルシーホテル〜前編
「下手クソなアート作品が壁に掛けられたエントランスホールを行き来するホテルの住民たち。ここは、スタンレー・バードが家賃代わりに押しつけられた大きな邪魔くさい品々に占拠されている。このホテルは、困難を切り抜けてなんとか生きている、あらゆるジャンルの多才な子供たちにとっては、エネルギッシュで絶望的な天国だった。」 (パティ・スミス) その“伝説のホテル”は、マンハッタンの23th Street...
View Articleヘディ・ウエストを偲んで〜その足跡と名曲「500 Miles」の源流を辿る旅
2005年7月3日、名曲「500 Miles(500マイルも離れて)」で知られるアメリカの歌手ヘディ・ウエストが闘病の末に癌で亡くなった。享年67だった。 今日は女性フォーク歌手の草分け的存在だった彼女を偲んで…その足跡と名曲にまつわるエピソードをご紹介します。...
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