2月22日は日本の“猫の日”。
愛猫家の学者・文化人が構成する猫の日実行委員会が、一般社団法人ペットフード協会と協力して「猫と一緒に暮らせる幸せに感謝し、猫と共にこの喜びをかみしめる記念日を」という趣旨で1987年に制定したものだという。
2月22日に選ばれた理由は…言うまでもニャいだろう。
この“猫の日”は世界各国でも制定されており、アメリカ合衆国では10月29日、ロシアでは3月1日、動物愛護団体・国際動物福祉基金が決めたInternational Cat Day は8月8日、ヨーロッパの多くの国がWorld Cat Dayとしている2月17日などなど多数あるのだ。
というわけで…今日は“猫の日”にちなんで猫にまつわる名曲の誕生日秘話をご紹介します。
本物のワニを持っているって君に言ったよね
そのワニを君にあげた
でも確かに約束したよね?
僕のワニを君にあげる代わりに
君は黒い猫を僕にくれるって言ったよね?
僕が欲しいのは黒猫
黒といったら黒!
君がくれたのは白猫じゃないか
もう我慢できないよ!
僕が欲しいのは黒猫
黒といったら黒!
日本では「黒猫のタンゴ」として知られているこの歌。
もともとはイタリア生まれの子供向けの歌「Volevo un gatto nero(黒い猫が欲しかった)」が原曲である。
ワニやキリンやゾウを友達にあげた少年が、代わりに黒猫が欲しいと要求する。
ところが、その友達がくれたのは白猫だったという他愛もない内容なのだが…何気ない言葉の端々から、情熱的でユーモアに富んだイタリア人的発想(交渉術)を感じずにはいられない。
いっそのこと動物園まるごと君にあげる代わりに
君は黒い猫を僕にくれるって言ったよね?
僕が欲しいのは黒猫
黒といったら黒!
君がくれたのは白猫じゃないか
だけどしょうがないから…
黒かろうが白かろうがもらっておくことにするよ
でも嘘つきの君とはもう遊ばない!
1969年、イタリアで毎年開催されるゼッキーノ・ドーロ音楽祭(子供の歌のための国際歌唱コンクール)で入賞したこの歌は、当時4歳だった女の子ヴィンチェンツァ・パストレッリの歌唱よってレコード化されて900万枚を売り上げる大ヒットを記録したという。
曲を手掛けたのはマリオ・パガーノというナポリ出身のシンガーソングライターで、作詞では彼の他に、アルマンド・ソリチッロ、フランチェスコ・サヴェリオ・マレスカという音楽家や作家も参加している。
日本では、同年(1969年)に、当時6歳だった皆川おさむが日本語版を歌って200万枚を超える空前の大ヒットとなった。
当時、NHKの人気番組『みんなのうた』ではこの楽曲だけに限らず「ピエロのトランペット」「おじいさんのボロ車」「ピノキオへの手紙」「ふたごのオオカミ大冒険」「ちびっこカウボーイ」などゼッキーノ・ドーロ音楽祭で入賞した童謡が紹介されることが多かったという。
当時、皆川和子(皆川おさむの叔母)が主宰していた、ひばり児童合唱団に「黒ネコのタンゴ」のリリースのオファーが来たことから彼が抜擢されたのだ。
皆川おさむはこの「黒ネコのタンゴ」をレコーディングした当時、タンゴが音楽用語とは知らずに猫の名前だと思って歌っていたというエピソードが残っている。
日本語詞を手掛けたのは、見尾田みずほという放送作家(札幌NHK)からコピーライター/作家に転身した人物。
彼女が書いた日本語版の歌詞は、原詞の翻訳ではなく独自に創作した内容である。
当時、日本では童謡という扱いではなく歌謡曲として発売されたその歌のために考えられた宣伝コピーはこんな言葉だった。
“大人のための子供の歌”
この皆川の歌唱による「黒ネコのタンゴ」は、翌1970年にマーキュリー社を通じてアメリカでも発売されることとなる。
それは1963年に坂本九が歌唱した「上を向いて歩こう」が「SUKIYAKI」としてビルボードチャートで1位を獲得した快挙に続く出来事だった。
その後、皆川おさむは英語、ドイツ語、オランダ語、イタリア語、スカンジナビア語で「黒ネコのタンゴ」をレコーディングし、その愛らしい歌声を世界中に届けたという。
<参考文献『世界の愛唱歌』長田暁二(ヤマハミュージックメディア)>
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