1954年3月から5月にかけてフランス領インドシナ北西部のディエンビエンフーで第一次インドシナ戦争中最大の戦闘があった。
“ディエンビエンフーの戦い”と呼ばれたその戦いは、ベトナム人民軍とフランス軍合わせて約1万人の戦死者を出す。
同戦争の大きな転機となり、フランスはベトナム撤退を余儀なくされることになる。
1959年から1960年にかけて、南ベトナムで始まった米国及びゴ・ディン・ジェム政権に対する武装闘争は、1960年12月の南ベトナム解放民族戦線の結成を機に、政府軍との本格的交戦に突入した。
ケネディ米大統領は特殊部隊4000人の派遣を決定。
1964年8月、ケネディ暗殺後に米大統領に就任したリンドン・ジョンソンは、トンキン湾での米艦艇に対する北ベトナム軍の攻撃(トンキン湾事件)を利用して米議会の戦争拡大支持を取り付ける。
そして…翌1965年2月7日、17度線北方のドンホイ爆撃をもって北ベトナム爆撃(北爆)に踏み切り、最大54万人の兵力を南部に投入。
そう…2月7日は、アメリカがベトナムに対して本格的に軍事介入をし始めた日として知られている。
ねぇ母さん
たくさんの人たちが涙を流しているよ
兄弟たちが次々と死んでいくよ
僕たちの手でなんとかしないと
ここに今、愛をもたらすために
ねぇ父さん
これ以上戦争の被害を広げないで
戦争は何も解決してくれない
愛だけが憎しみに勝つ
何とかして見つけだそう
この世界に愛をもたらす方法を
──1970年3月16日、マーヴィン・ゲイ(当時30歳)にとって最高のデュエットパートナーだったタミー・テレル(当時24歳)が、脳梗塞によってこの世を去る。
タミーの死後、彼はショックから立ち直ることができず、しばらく隠遁生活を送っていた。
対人恐怖症に陥り、自宅に引きこもり、所属していたモータウンレコードへの不信感も募り、薬物依存への道を辿ってゆく。
モータウンの創業者ベリー・ゴーディの姉にあたる17歳年上のアンナと21歳の時に結婚して、幸せと成功を掴んだ彼だったが…すでにこの頃は夫婦関係も冷めていたという。
「What’s Going On」の制作を始める少し前のこと…
彼は人前で歌うことを拒否することによって、ショービジネスの世界のプレッシャーから精神的に逃れようと考えていたという。
しかし、音楽的には実験し成長を続けた。
彼は、そのキャリアにおいて初となるアーティストのプロデュース業を始める決意をしたのだ。
まずは自分自身をプロデュースするのではなく、モータウンのグループ“オリジナルズ”を手がけることとなる。
最初のプロデュース作「Baby I’m For Real」は、1969年の終わりにソウルチャートで1位を、そしてポップチャートでは14位を記録した。
「将来なにをやろうか色々考えてみて、まず僕は自分の過去を検証しなければと思った。オリジナルズを聴いたとき、彼らの可能性に興奮した。4人の違った声のために曲を書くアイディアが溢れてきたんだ。」
不思議な話だが、彼は「Baby I’m For Real」をすでに心が離れてしまっていた妻アンナと共作しているのだ。
なぜ一緒に曲を書けたのだろう?
「僕たちは日々、ビンを投げつけるほどの喧嘩を繰り返していた。でも翌日は、出会ったばかりの恋人同士のように愛し合うんだ。喧嘩は僕たちに刺激を与えてくれていたんだ。アンナは僕の音楽のためにいつも力になってくれた。アイディアをくれ、可能な限り僕を後押ししてくれていたんだ。」
彼はオリジナルズのプロデュースを通じて、ハーモニー重視の音楽を突き詰めるようになる。
1970年代初期からのレコーディング技術の劇的な発達により、ヴォーカルの実験的手法も発展した。
1971年初めにリリースされた「What’s Going On」において、彼はハーモニーを自分の声のバリエーションで全トラックを録音する初めてのアーティストとなる。
「僕はアイディアにつまずきながら、ゆっくりと曲を煮詰めていったんだ。歌詞のアプローチにもこだわろうとした。今までのようなラブソングを歌う気分じゃなかったんだ。タミーもちょうど死んでしまったしね…」
彼はタミーの死によって物事を哲学的に捉えるようになり、音楽以外のことにも関心を向けるようになっていった。
愛する者の死が、彼の心に新たなインスピレーションを与えたのだ。
数ヶ月に渡って音楽活動から遠ざかっていた彼は、アルバム『What’s Going On』で復活を果たす。
そのオープニングを飾ったタイトルナンバーは、次世代のスティーヴィー・ワンダー等が切り拓いていくこととなる“ニューソウル”の起点となってゆく。
暴力で僕を抑えつけないでくれ
話し合えばきっとわかりあえる
ねぇ、いったい何が起こっているの?
この世界はどうなっているの?何が起こっているの?
ねぇ、世界はどうなっているの?
歌詞は、ベトナム戦争に従軍していた彼の弟フランキーから送られてきた一通の手紙が、この曲のモチーフとなったという。
その手紙には、戦地で見た地獄のようなありさまが切々と綴られていた。
悲惨な殺戮が繰り返される戦争や理不尽な問題に対して「この世界はどうなっているの?何が起こっているの?」と力強く問いかけるリフレインに重ねて、彼はすさんだ人々の心に愛を甦らせようと呼びかけた。
「僕は音楽的に、自分自身の道を歩まなければならないと悟ったんだ。モータウンという会社の姿勢は、とてもじゃないが息苦しい。弟のフランキーがベトナムから帰ってきて色んな話をしてくれた。そして僕の血は煮えたぎり始めたんだ。怒り、エネルギー、アーティストとしての視点が生まれてくるのがわかった。」
この歌の作詞・作曲者のクレジットには、マーヴィン・ゲイの他にモータウンのスタッフだったアル・クリーヴランド、そして人気グループ“フォー・トップス”のレナルド・ベンソンが名を連ねている。
共作者のベンソンは、当時サンフランシスコで反戦運動を行っていた若者と警官隊の衝突を目撃し、それを元に歌詞を書き始めていた。
そして、クリーヴランドの協力を得て曲にまとめようとしていたが…この時点ではタイトルも決まっていなかったという。
当時、その曲を聴いたマーヴィン・ゲイが“What’s Going On”というフレーズ(曲名)を考え、歌詞を追加し、更にメロディーの装飾を加えて楽曲が完成した。
リリースから程なくして初回プレス盤10万枚はすぐに売り切れ、当時(1971年)のモータウンにおいて最速の売り上げを記録した。
アルバムのジャケットに写る彼は“モータウンの貴公子”と呼ばれた60年代の頃の雰囲気とは違っていた。
冷たい雨に打たれながら遠くを見つめ、思索的な表情を浮かべる髭面の男。
彼は自ら初めてプロデュ-スをしたアルバムに、深刻な社会問題に対するメッセージソングを収録した。
<引用元・参考文献『マーヴィン・ゲイ物語 引き裂かれたソウル』デイヴィッド・リッツ(著)吉岡正晴(翻訳)/スペースシャワーネットワーク>
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