ジェフはとても変わった男だった。
彼の最大の趣味は車で、特にホットロッドカーに興味があり、車の下に潜り込んでオイルを交換し、体中油だらけになることが最も楽しんでいる時間なんだ。
彼は機械をいじって遊ぶのが大好きで、自分のギターも“古い鉄のかたまり”のように見なしているようだったよ。
ボロボロになった古いフェンダーを持ってきて「このギターは良くないな…」とか言う。
私が「別のギターはないのかね?」と聞くと、「これしかないよ」なんて言いながら、そのギターで信じられないほど美しく、天にも上るようなサウンドを作り上げるんだ。(ジョージ・マーティン)
ジェフ・ベック。
多彩な奏法と抜群のセンスでギターの可能性を極限まで拡げた“改革者”としてロック史にその名を刻んできた男だ。
一般的に“ロックの3大ギタリスト”と言えば、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、そして彼の名前が挙げられる。
クラプトンはブルースの魂を追求する“求道者”として。
ペイジはハードロックを完成させた“創造者”として。
そして彼はロックギターの“改革者”として。
今日は1944年6月24日に生まれた彼の誕生日にちなんで、まさに“ジェフ・ベックらしい”エピソードをご紹介します。
──1974年12月、ザ・ローリング・ストーンズのギタリストだったミック・テイラーがバンドからの脱退を表明する。
バンドは早々に新しいギタリストのオーディションを行う。
当時31歳だったジェフ・ベック、ロリー・ギャラガー、ピーター・フランプトンなど、一流ギタリストがミック・テイラーの後任候補としてオーディションに臨んだが…なかなか決まらず、ストーンズはそのまま4人のメンバーで新作アルバムの製作を続けることとなる。
予定通りレコーディングに取り掛かったストーンズだが、後任ギタリストのオーディションを行いながらのスタジオ作業となったため、スケジュールは大幅に遅れていた。
ストーンズへの加入を打診され、実際一緒に演奏したことについて彼はあるインタビューでこんな風に語っている。
当時ストーンズから連絡があり「オランダのロッテルダムに来て、いくつかの曲に参加して欲しい!」と、オファーを受けたんだ。
スタジオに到着すると、400本ものギターに別々の名札がつけられて並べられていたよ。
俺は「これは全部キースのギターかい?」と聞くと、彼らは「違うよ、これからオーディションに来るギタリストたちに弾かせるものだ」と言った。
「ちょっと待て、俺はオーディションに来ているんじゃないぞ!」と言うと、彼らはこんなことを言ったんだ。
「そうさ、違うとも。君はここで俺たちと一緒に演奏をする。それから俺たちは他のギタリストたちに“もう来る必要はない”と伝えるんだ。」
それは、半ば強引な感じだったという。
当時の彼は、第2期ジェフ・ベックグループの解散後に結成した新バンド“ベック・ボガート&アピス”で、それなりの実績を残しながらも(再び)バンドを自然解散させた時期だった。
ちょうどその頃、ディープ・パープルを脱退したリッチー・ブラックモアの後釜として彼の名前が候補に挙がったらしいが、実際にはオーディションにも至らなかったという。
そんな中でのストーンズとの接触だった。
俺はその場で“自分はどの道を進むのか”決断をしなければならなかった。
結局、ストーンズとはリハーサル1回でもうたくさんだったよ。
ストーンズと一緒に演奏していると、とても古風で変わっている感じがしたよ。
その頃の俺は、激しいリフとビリー・コブハム(マイルス・デイビスやマハビシュヌ・オーケストラで活躍したドラマー)のリズムにのめり込んでいたから、ストーンズで役に立てるはずがなかった。
俺はイアン・スチュアート(ストーンズのロードマネージャー)のホテルの部屋のドアの下にメモ書きを忍ばせてロッテルダムを去ったんだ。
「間違いだった。」と書いてね。
後悔はしていないさ。
よく考えてみれば分かる。
それまで自分がステージのセンターにいて、チケットには自分の名前が書いてあり、俺がステージに出ていけば“歌なしの曲”でも十分に観客を湧かせることができる。
この特権をどこかのバンドの加入権と交換する人がいるかい?
──1975年、彼は“5人目のビートルズ”としてその名を轟かせていたジョージ・マーティンをプロデューサーに迎え、当時流行していたフュージョン色の濃い初のインストゥルメンタルアルバム『Blow by Blow』を発表する。
インストゥルメンタルアルバムとしては珍しく、アメリカでゴールドディスクを獲得し、セールス面でも成功を収めた。
彼は『Blow by Blow』のリリース直後、あるインタビューでこんなことを語っている。
当時一緒に演奏できる俺の好きなボーカリストがいなかったんだ。
だから再びバンドを組んだり、どこかのボーカリストを迎えたりしてアルバムを作るのは問題外だと思っていたよ。
一緒に仕事をする者として、ジョージはとても優れていたよ。
彼は客観的な視点を持っている人物だった。
的確な方向からアルバムを捉えなおす。
これこそプロデューサがするべきことだと俺は思う。
彼はしっかりコントロールし、俺たちが持っていた粗雑なアイディアを形あるものとして表に出させることができたんだ。
彼が俺のことを完全に理解していたとは思わないが…まぁ俺自身も自分で自分がよくわかっていないからね(笑)
一方、ジョージ・マーティンも当時の彼についてこんな風に語っている。
私は「もし何らかの魔法を期待しているなら、それはできない。今まで作ったことのないサウンドを期待しているなら、それもできないよ」とジェフに最初に言い伝えた。
「サウンドはジェフのギターから出てこなくてはいけないし、それを自分で作り出さなくてはいけない」とも言った。
そして私たちは一緒にそのサウンドを作っていったんだ。
彼自身がスタジオでサウンドを紡ぎ出し、私はそれをレコーディングの形にしていった。もちろん、あちらこちらにちょっとばかり手を加えたが、特別な手品のようなことは何一つしていないし、とてもストレートに作られたアルバムだった。
『Blow by Blow』は内容的にもセールス的にも大成功を収めた。
このアルバムのせいでジェフのキャリアは難しくしなってしまったのかもしれない。
「こんなものを作ってしまったら、この後に何を作ればいいんだ?」とジェフがぼやいていたのを憶えているよ。
※トップの画像はオフィシャルサイトから使用させていただきました
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佐々木モトアキ
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